第30章

藤原美佳は相澤裕樹の腕に手を通し、病室に入ってきた。その顔には隠しきれない得意げな表情が浮かんでいた。

「相澤おじいさん、美佳ちゃん来ましたよ!」

相澤おじいさんはベッドの上に座り、相澤裕樹が入ってきた時には笑顔を浮かべていたが、後ろから現れた藤原美佳を見た途端、その笑みは消え去った。

「来たか、座りなさい。裕樹も、会社が忙しいなら会社に行けばいいんだ。いつもこんな老いぼれのところに来て何をしてるんだ。わしは病気でもないのに」

相澤裕樹の端正な顔には穏やかな笑みが浮かんでいた。「おじいさんに会いに来ただけですよ。会社の仕事に支障はありません」

藤原美佳は丁寧に身をかがめ、相澤おじい...

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